父は読書家だった、と思う。貧しい家だったけれど、本箱にはたくさんの本があって、父はひと月に1冊、私に本を買ってくれた。それも、小学生なのに、難しい本ばかり。シェークスピアから始まりドストエフスキー、スターンダールにツルゲーネフ、そんな本を繰り返し読んだ。
スタンダールの「赤と黒」、小学生にわかるわけないでしょう。でも、それでも何度も読んだ。
父とはそりが合わずに、ずっと私は親不孝していたと思う。でも、子不幸というのもあるはずだ。父は私にとっては子不幸な父だった。だから、お互い様。
悩み多き父、一生、苦悩の中で過ごしていた人だと私は父をそういう風に思い出す。
父の本箱にあった「三太郎の日記」と「六法全書」、若かりし日の父を想像して、少し胸が熱くなる。 |