丘の上の小さな家に住もう
空に向かって
息を切らして登る坂道
やっとたどり着けば
雲の影の中に静かにたたずむ家
庭には大きな柳の樹が一本
地面に届くほどのしなやかな枝が風に揺れる
うす紫のライラックの花が満開
やさしい香りが辺り一面に漂う
近くには白樺の林と細い散歩道が続いている
扉を開ければそのまま居間が広がる
色あせた床がきしんだ音を立てる
ストーブの上でジャムが煮えている
夜中、みなが寝静まるころ、目が冴えて眠れない
しかたなく、そんな家に住むわたしを想像してみた
住んでいるのは、おばあさんのわたしだろうか
それとも少女のわたしだろうか
陽が差し込む窓辺でギターを弾く
小さな声で愛の歌を歌う
しみじみとわたしは心と語り合う
誰にも打ち明けることのない無邪気な夢を追いかける
白々と夜が明けてきた
眠れない夜はもう過ぎ去る
さあ、起きよ
暖かなベッドから抜け出して
髪をとかそう
朝ごはんはトーストにマーマレード
コーヒーはサイフォンで淹れて
丘の上のわたしの家
きっと
懐かしい人と一緒に住んでいるだろう |