若かった時、自分の肖像画をもらったことがある。油絵のような大げさなものではなくて、スケッチのような絵だ。実物よりもずっと生き生きと美しく描いてくれた。それなのに、いつかどこかに失ってしまった。大切に扱わなかったことを後悔している。
ある時、駅の地下道の雑踏の中に彼を見つけた。彼もこちらに気付いたようだった。でもあっという間に人の波に飲まれて見失ってしまったのだった。そんなものだ。すれ違っていくのだ。
もうずっとずっと昔の話、顔も名前も忘れてしまった。それでも悔いとして心に残っている。あの時、わたしを描いてくれた人、どうしているだろう。今も絵を描いているだろうか。
高校時代の同級生で、絵を描く人がいた。特に仲が良かったわけではないけれど、どんな絵を描くのかとても興味があって、いつか見せてって言った。驚いたように彼女の顔がぱっと輝いて明るくなった。
卒業して、ずっと後に彼女から電話があったらしい。もう、その時はわたしは家を出ていたから、何年も経ってからそのことを聞いたのだ。絵が描けたからと連絡してきたのだった。
いろいろあって、連絡せずじまいだった。申し訳なかった。きっと落胆しただろうなと思う。他の友人のことは忘れてしまったのに、彼女のことは時々思い出す。今も絵を描いているだろうか。
絵を描く人に憧れる。自分にも少しでも画才があったなら、どんなに素敵だろうと思う。中学生だった頃、美術の先生が描いていた東京駅の絵を見せてもらったことがある。強烈な美しい絵だった。その空は紫色だったことを、今も覚えている。 |