このCDを聴いた時の衝撃をなんと言い表わすことができるだろう。
ケルン・コンサート 1975年 キース・ジャレット 30歳の時の演奏だ。
調べれば、伝説になるほどのエピソードが満載だから、いかにこのCDの評価が高いかがわかる。
実際、聴いてみて、度肝を抜かれた。
最初の一音目から、その限り無い透明な美しさに、時が止まったかと思った。
事実、わたしの思考はぴたりと止まって、天から降ってくる音楽に集中した。
音楽はまるで雨のように降り注がれた。
渇いた地面をみるみる潤すかのように、しかし激しくではなく、静かに染み込んで行く春の雨のように。
美しい祈りにも似て、心にしんしんと濡れ落ちて行くのだった。
最初から最後まで、息をのみ身動きもせずに聴き込んでしまった。
きっとこういうのを奇跡と言うのだろう。 |