死が何が悲しいかと言えば、もう絶対に逢えないのだということです。
逢うことも触れることも、声を聴くことも話すことも、けっしてできません。
たとえ地の果てに別れ別れになっても、生きてさえいれば、どこかで再び逢える日が来る。
そんないちるの望みが残されているけれど、死んでしまったら、すべては終わってしまうのです。
あたりまえのことだけど、その現実に打ちのめされます。
さっきまでいたのに、今はもういないという事実。
触れた手の温かさ、見つめた瞳の輝き、規則正しい呼吸の音、匂いも感触も残っているのに、
もはや過ぎ去ってしまったという事実。
でもしかし、ふと考えます。
もしも死んだなら、別の世界で逢えるなんてことがあるのでしょうか、本当に。
そうであるのなら、その日を楽しみに生きていけます。
再会の瞬間を想像すれば、ぽーっと胸が熱くなります。
いてもたってもいられない気持ち。
そんなことを思う春の夜です。
ドビュッシーの「夢」を聴きながら。 |