あまり劇を観に行くことはないのですが、井上靖の「猟銃」を中谷美紀が演じると知って、思わずチケットを購入してしまいました。
井上靖と言えば、「氷壁」が有名でしょうか。夢中になって氏の作品を読み漁ったことがあります。
もっとも印象に残っていて繰り返し読んだのは「ある落日」だったかしら。清里の駅から山へ続く1本道を思い浮かべます。
「猟銃」は3人の女性の手紙で構成されています。
妻と愛人と愛人の娘、まったくタイプの異なる女性3人をどう演じるのかすごく興味がありました。
恐らく話題としたら、愛人の彩子が鏡も見ずに着物を見事に着付けるシーンでしょうか。それには驚きましたけれど、私としては、妻である赤いドレスのみどりが素晴らしかったと思うのです。
小説の中ではさまざまな色が出てきます。
「百日紅の毒々しい赤色」
「納戸のお羽織」
(劇では「納戸色」と言っていました。知らなかったのですが、納戸色とは緑色を帯びた深い青色だそうです。)
「プルシャンブルーの真冬の海」
「真っ赤に燃える船火事の情景」
「セピア色の蛇」
「真白い斑点の蛇」
その色のすべてを演技一つ一つで表現されていたと思います。
中谷美紀さん、素敵でしたよ。さすがでした!
そして、やはり井上靖氏の文章の巧みさ、美しさがこの劇を支えていました。 |