10月の穏やかな日、フジ子・ヘミングのコンサートに出かけてきた。
前々からいつか生の彼女の演奏が聴きたくて、でも中々チケットが手に入らなかった。
いつもコンサートは何ヶ月も前から手配しておくので、当日どんなに忙しくても出かける思い切りが付くというもの。1週間後はきっと忙しいので行かれないなあと思っても、3ヶ月後なら大丈夫。何とかなるだろうと思う。実際には目が回るほど追い詰められていても、やはり出かけることになるからいいことだ。
でも、その日はやはり追いまくられる仕事とずっと続いていた頭痛でちょっときつかった。
美しい音楽を聴いたら頭痛も治るでしょうと思い切って出かけたのだが、コンサートの最中もぐわーんぐわーんと頭が鳴るほどの痛み。
じっと、目を瞑りながら彼女の優しいピアノに癒されながら。
数年前にNHKで放送された番組で彼女の演奏を聴いて打ちのめされた思いがあった。そんなにも激しい感情があるのに、そっとそっと抑えてそこからやっと自然と生まれてくる優しさが彼女の指から奏でられるのだった。
リストのラ・カンパネラはもちろん、すべての演奏が心と体にもすーっとじわーっと入ってきて心地良い。
頭痛はやはり治らなかったけれど、子供の頃、熱っぽい私の額に母親が手をあててくれているようなそんな思い出がよみがえる夜だった。
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